酒をつくる関谷醸造見学 第3編 〜ついに、オリジナル日本酒誕生!〜

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この度、酒専門店鍵やでは、愛知県北東部に蔵を構える関谷醸造様のお力を借り、企画、酒質設計、デザインなどを当店で決めた完全オリジナルの日本酒を醸造致しました。

蔵にお邪魔させて頂きまして、仕込みの一部を実際に体験をさせていただきました。
今回は仕込み体験で感じたことや、オリジナル日本酒の詳細をお伝えします!

仕込み体験

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私たち鍵やチームが体験させていただいたのは留添えの行程。
留添えとは、酒母を立てた後3回に分けて麹、蒸米、水を投入する行程の3回目のことを指します。

この行程の後、醪は約1か月の発酵期間に入ります。発酵期間は繊細な温度管理の元進められ、杜氏さんの判断によってベストの状態で搾られます。
そんな大切な行程の一部とはいえ、実際に自分たちの酒の仕込みを、自分たちで作業するという貴重な経験をさせていただいて本当にありがとうございます!

当日の朝、蔵入りすると小さな蒸し器から真っ白な湯気がもうもうと上がっていました。
今回のような少量の仕込みには少量専用の蒸し器を使用しているそうで、その様子は小さいながらも迫力満点。

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蒸し上がったお米を蒸し器から降ろし、台の上へ均等に広げます。
そうやって放熱させ、狙った温度まで冷ますことで米を締め、酒造りに最適な状態まで持っていきます。

けれども、この作業が大変!蒸したてのお米を手作業で広げていくのですが、このときの蒸米の温度はなんと100度近く!
私たちも実際に触って広げますが、とにかく熱い!炊き立てのご飯を素手で触っているようなものだと考えて頂くと想像しやすいかと思います。

蔵人さんたちは、そんな熱くて仕方ない蒸し米を、慣れた様子で素早く広げていきます。

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コツがあるのか聞いてみると、
『慣れこそあるが、熱いものは熱い。だからまあ、やせ我慢ですね』と笑いながら仰っていましたが、
やせ我慢でも湯気がもうもうと上がる温度のものを次々に素手で触れるのは凄すぎます。

私たちもおいしいお酒の為、とどうにか触って広げていきますが、やはり熱さにはひるんでしまいます…。

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このお米を広げる作業中に、硬さや状態、蒸し具合を見る為、一口大に取ったお米を掌で捻り潰して『ひねり餅』と呼ばれるものを作ります。

ここで驚くのが、蒸しあがったお米って意外と硬いんです。
もちろん生のままよりは柔らかいのですが、弾力がある、といった表現が適している感じでしょうか。
その弾力も精米歩合に応じて違っていて、磨いている方がより硬いのだそうです。

そのひねった米は、麹などには使えず溶けにくい為そのまま食べてしまいます。蒸したての酒米は、ほんのりと甘みがあり、その甘みが噛むほどに広がっていくような素朴な味が有りました。

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そうして広げていったお米は、少しの間置かれ、目当ての温度までゆっくりと冷ましていきます。

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次に、冷ましたお米を発酵タンクの中に投入するため、キャスターのついた小型タンクが冷ました蒸米の元に運ばれてきます。今回の仕込みは一つのタンクが約200Lと小規模なものの為、こうしてタンク側を移動させることが出来る仕組みになっています。

米が置かれている布を持ち上げ、数回に分けて投入していくのですが、やはり米なので多少は布にくっついてしまっています。そんな布にくっついている少しの米さえも無駄にしないよう、丁寧に手で払い落して投入していきます。

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全量投入すると、櫂と呼ばれる木製の大きなへらのようなもので混ぜていきます。
この混ぜ方にもコツがあり、中にある米を潰さないようにしながら、下から上へ、全体が均等になるように混ぜていくんだそうです。

タンクの中身は水とお米ですので、櫂を入れるのもなかなか重量を感じながらの作業になります。
ぐっ、と引き上げる時にはかなり力を入れないとしっかり混ざらないので、力仕事です。

そんな作業も蔵人さんは慣れた様子で、丁寧に素早くこなしていきます。こんな作業をサクサクこなしていく蔵人さんは本当に凄いです。

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ある程度混ざりきると櫂入れは終了。この後タンクは温度が一定に保たれた部屋に運ばれ、発酵期間へと入っていきます。

私たちの仕込み体験はここまでとなり、あとは杜氏さんを中心とした蔵人さんに搾りまでの過程をお任せします。
こんな体験は滅多にできるものではないので、非常に新鮮な気持ちで作業をすることが出来ました。
大切な仕事場にお邪魔させていただき、本当にありがとうございます!

香り高く、味わい深く。その名は『cosmo』

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そんな蔵の方々と私たちの思いの詰まったオリジナル日本酒が、ついに皆様の元へお届けできる状態になりました。
ここからはそんなオリジナル日本酒の全貌をついに公開致します!

ブランドネームは『cosmo』

宇宙を意味する言葉で、一本一本に壮大な魅力や世界、そして日本酒そのものの奥の深さや魅力を感じて貰いたい、という思いを込めて名付けました。

0からコンセプト、使用酒米、酒質設計や使用するボトル、ラベルデザイン等を決めた、正真正銘・完全オリジナルの一本です。
ラインナップのそれぞれが200Lの小型タンクに1本ずつの仕込みとなり、少数生産だからこそ、きめ細やかな仕込みの出来る環境での醸造となりました。

また、ブランドコンセプトに合わせたラベルデザインは星座や惑星をモチーフとしていて、今まで誰も見たことがないような革新的なものとなりました。

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設計のコンセプトは『香り高く』。

それはまるで、花束や高級ワインのような華やかさ。
香るだけで心地よい気分になるような一本をと、杜氏さんと相談を重ねて設計致しました。

仕込み水の水質、使用する米と酵母、様々な要素が組み合わさって生まれる日本酒の味わいを狙ったものに設計している酒蔵さんの凄さを再認識しながら決まった設計は、下記の通りとなりました。

・純米吟醸…全量が無濾過生原酒。兵庫県産山田錦の新米を使用、55%精米、きょうかい18号酵母との組み合わせ。
・純米大吟醸…同じ醪から無濾過生原酒と火入酒の2種類を製造。兵庫県産山田錦の新米を35%まで磨いて使用し、きょうかい6号酵母との組み合わせ。
また、火入酒の方は、上槽の後、適切な温度管理の元、じっくりと半年ほど熟成を経た上での発売となります。

cosmoは上記の3種類のラインナップ展開となり、結果として、それぞれの個性を持つ形となりました。

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では、実際に完成後のお酒をテイスティング!
頂いた際は本当に搾った直後の状態だった為、皆様の手元にお届けする頃には一層美味しくなっていること間違いナシ!と言った雰囲気の味わいを感じました。

純米吟醸、純米大吟醸の2種類、どちらも素晴らしいポテンシャルを秘めた一本です。

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まずは純米吟醸から詳しい味わいを。

開栓時から、設計のコンセプト通りである華やかな香りを明確に感じられます。

香りの要素としては若いメロンのような甘く爽やかなニュアンスが印象的で、冷蔵庫から出したばかりの極めて温度が低い状態でもここまで力強い香りを感じさせるお酒もなかなかないのでは?というほどにはっきりとした輪郭を描きます。

口に含めば、ほんのりとしたガス感が心地よく、ふんわりと広がる味わいが含みの良さを演出します。控え目ながらも美しい甘さ、柔らかな酸味、そして後口に感じるビターさがキレを演出し、非常に整った調和を魅せる、自然と次の一杯が進むような美しい味わいをしています。

一杯目からハイレベルな完成度を見せてくれる一本ですが、真価を発揮するのは少し温度が上がった10~15℃ほどの温度帯。
香りが更に花開き、まるで完熟メロンのような高級感溢れる甘美な香りに。
しかし、その中にも絹のような清涼感を覚え、より豊かな香りを引き立ててくれます。

味わいからも、香りに感じられた完熟メロンを思わせる幅のある甘みを感じさせます。
また、後口に存在したビターさが消え、代わりに滑らかな酸がシャープなキレを演出してくれます。全体のバランスの良さが更に増し、テイスティング会でも社長イチ押しの高評価となりました。

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次に純米大吟醸。

開栓時には、小さな白い花のような華やかながらもどこか優しい印象に、酸と甘さを内包する柑橘系のような雰囲気、更には、酵母由来の乳酸が織り成すヨーグルトのような香りが感じられます。

含みからは白桃のような味と、香りにもある酸のニュアンスをじわりと滲むように感じます。

全体的に高精米ならではの綺麗さを持ち、少しサッパリとしていて食中酒にも向く印象を覚えます。搾りたてゆえの硬質な雰囲気もあり、一定期間の低温熟成もプラスに働くことでしょう。

また、純米吟醸同様に、10~15℃の温度帯になると次々に味わいや香りが花開き、このお酒の持つポテンシャルに驚かされます。

香りは黄色い南国果実を思わせるような非常に華やかで甘いものへと変化を遂げています。
味わいも、口に含んだ瞬間から驚くほど甘さや旨味が広がり、口の中でもう一段階広がりを魅せます。

こんなにも高級感のある華やかさと甘みを見せてくれる味わいながらも、飲み込んだ後にはスッパリと心地よいキレと軽やかな甘みの余韻があり、重さを感じさせることの無い味わいとなっています。

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次に、純米大吟醸・火入酒。

cosmoのラインナップの中では唯一の火入酒となるこちら。また、発売も熟成を経た上での発売となる為、味わいの設計も若干異なります。

心地よく漂うさっぱりとした甘い香りは、柑橘系のような酸も感じさせる要素の他に、南国果実を感じさせるトロピカルな甘さや、麹由来の奥深さを少し感じさせます。

高精白らしい透き通った美しさを備えながら、半年の熟成で纏った滑らかで奥深いコクのようなものをしっかりと感じます。

大変滑らかな口当たりで口の中にするり、と入り込み、咲き誇るように美しくまろやかな旨味が広がります。

純米大吟醸生酒で感じられた硬質な雰囲気が表情を変え、熟成由来のまろやかさの中に美しく通った芯のようなものに感じます。ですが、フレッシュさは損なわれる事がなく、豊かな風味として残っています。まさに、熟成と生酒の良い部分をどちらも備えた逸品、といったところでしょう。

また、他のcosmoと同じく、10~15℃、冷蔵庫からお出し頂き、少し時間が経ってからの温度帯こそ、このお酒の魅力が最も引き出せている瞬間と言えます。

より一層花開いた香りは、まるでブーケのように色とりどりの香りを魅せます。
味わいは、奥深く感じる旨味や甘みが一層引き出され、そこから円く美しい酸が美しいキレを演出し、高い次元でバランスの取れた美しい一本として、存在感を遺憾なく発揮します。

全体の調和が取れながら、それぞれの要素がしっかりと主張するという、絶妙なバランスが次の一杯を誘う、そんな美酒となっています。

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いずれのモデルも非常に完成度が高く、素晴らしい出来栄えとなっております。

また、醸造責任者である関谷醸造・吟醸工房の宮瀬杜氏のテイスティングのコメントとしても、
「全ラインナップが想像以上の出来の良さで、純米吟醸と純米大吟醸の生は、搾りたての今でこの味わいなので、今後出荷・発売までの期間で一層旨さが増すこと、つまりより成長していくことが見込めるだろう。それに、火入れの方はとても綺麗な熟成を遂げている。」というお話を頂きました。

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鍵や一同、そして関谷醸造にて企画、醸造、発売まで携わって頂いた方々。
気持ちはひとつ、早くお客様の元にお届けし、楽しんで頂きたい。その一心です。

小規模の仕込みの為、数量限定での発売となってしまうのが心苦しいところですが、是非お手に取って頂いてこの『cosmo』を味わって頂けたら、と思います。
それでは、発売まで今しばらくの間お待ちください!

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