酒を楽しむ「極めれば華」クラフト・ジン界のウラディミール・ホロヴィッツ 尾鈴山蒸留所 OSUZU GIN…圧倒的な存在感

「極めれば華」

クラシック・ピアノを聞かない方にはホロヴィッツとはなんじゃ︖となると思うのですがご存じない方は検索してみてください。圧倒的なテクニックとドラマチックな演奏で聴衆を魅了したピアニストです。

高校生の頃、同じピアノの先生についていた先輩が「これ一度聞いてみたら︖凄いぞ」とリスト作曲「メフィスト・ワルツ」のライブ演奏の入ったレコードを貸してくれました。それ以来私はホロヴィッツにとりつかれて日本で手に入るレコード、CDは全て購入。
1983年に彼が初来日した時には5万円した演奏会にも行きました。

私なりに彼の演奏のイメージを一言で表現したものが「極めれば華」

そして「OSUZU GIN」 を試飲してみて頭に浮かんだ言葉も「極めれば華」

OSUZU GIN

安堵感に包まれるストレート

まずはストレートで頂きます。

グラスに注いだ瞬間漂ってくる華やかなで甘い香り。素晴らしく心地よい、その場から動くのが嫌になるくらい良い香り。
華やかな中にどこか落ち着いた安堵感を持たせてくれ、何時間でも楽しめそうな飽きのこない香りです。 芋のフルーティーな香りを中心に柑橘系の爽やかな香りがぐるぐる回ってきます。

一口そうっと口に含んでみると、芋焼酎の香ばしさ、ボタニカルが織りなす微妙な爽快感、アルコールの刺激、遠くに感じる山椒の風味が華やかにはじけた瞬間、やわらかい甘味が舌を包み込んでくれます。
飲み下して華やかな刺激が去ったあともこのやわらかい甘さは残っています。すごく上品で繊細な甘さ、旨味さえ感じます。
料理好きだった母が「甘味は旨味と語源が一緒なのかもしれない。」と言っていたのを思い出しました。香りを楽しんだときにも感じた「安堵感」はこのやさしい甘味・旨味から来ているようです。安堵感に包まれていると再度心地よい香りが舞い降りてきました。すごい陶酔感を感じます。

思い出深い二つの香り

5 分ほど香りを楽しんだ頃に突如として現れてくるのが私にとってはとても思い出深い二つの香り。

一つは高級なお香の香り。

私事で恐縮ですが、私の母の実家は西山浄土宗のお寺(加太、常行寺)で私自身も僧籍を持っており、お盆のときには檀家さん参りをさせていただいています。子どもの頃は毎週末、そして夏休みのほぼ全日をこの寺で過ごしました。先代の住職(私の祖父)は朝の勤行を欠かさずに行っており、私が朝目覚めてご本尊に手を合わせに本堂に入るといつもお香のいい香りが漂っていました。また僧侶の資格をとるために本山で修行していた時も本堂はいつも花の香りとお香のいい香りで満たされていました。
試飲している最中もご本尊の前にいるような感覚を覚えて背筋がピンと張ってきます。

もう一つの思い出深い香りは森の香りです。

私はドイツに 7 年ほど住んでいました。ドイツは都市が森に囲まれるように形成されていて、趣味を聞かれて「森を散歩すること」と答える人がかなりいます。友人がよく森に連れて行ってくれたのですが、それまで森の香りがあんなに心地いいものだとは知りませんでした。

この二つの香りのお蔭で今回の試飲は思い出深いとても素晴らしい体験になりました。

さて OSUZU GIN の香りを楽しみながら昔の事を思い出している内に 30 分経ってしまいました。この時点で OSUZU GIN はストレートで頂くのが一番活きると思いましたが定番のカクテルを作ってみることにします。

注)各材料の割合について 家飲みの楽しみはアルコール度や甘味を自分の好みで変えられるところであります。 表記した分量にこだわらずご自分が一番美味しいと思う割合を見つけてお酒を楽しんでいただければ嬉しいです。

マティーニ

OSUZU GIN

OSUZU GIN のエレガントでやわらかな甘味・旨味を活かそうと思いドライ・ベルモットはクセのない「ドラン」を選びました。ジンとドライ・ベルモットの割合はジンの香りが立つ分ドライ・ベルモットを多めに、ジン:ドライ・ベルモット=3:1で。

私はマティーニをミキシング・グラスでステアする回数としてジンとドライ・ベルモットの香りが一体となってからプラス 10 回くらいを目安にしています。
しかし OSUZU GIN はその華やかな香りの存在感が圧倒的でなかなか香りは変化してきません。飲んでみると味の方は思ったよりジンとベルモットが混ざっていて美味しくいただけました。

ちなみこのマティーニが時間の経過でどう味が変わるか試してみたいと思い 15 分経ってから再度試飲したところ、華やかなジンの香りはしっとりしたいつものマティーニの香りに変化していました。

< 材料 >
OSUZU GIN 45ml
ドライ・ベルモット(ドラン)15ml
レモンピール、オリーブ

< 作り方 >
1. 材料をよく冷やしたミキシング・グラスに入れ、ステアしてカクテル・グラスに注ぐ。
2. レモンピールを絞りかける。好みでオリーブを飾る。

ギムレット

OSUZU GIN

ジンと生のライム果汁をシェークするだけの単純なカクテルですが思わぬ発見がありました。

華やかな香りがとてもエレガントで控えめな甘い香りに変化するのです。ライムの柑橘系の刺激臭も穏やかになり目をつむって香りをかいでみると何のカクテルかわからないくらいです。飲んでみると熟成感が感じられるほど味に奥行きがありました。

< 材料 >
OSUZU GIN 45ml
ライム 1/2個

< 作り方 >
1. 絞ったライムとジンをシェークしてカクテル・グラスに注ぐ。

食中酒としてのジン・ソニック

OSUZU GIN

ジンの香りが全然薄まらないのにびっくりしました。ボタニカルのエキスが多いためにアルコールには溶けるが水に溶けない成分が現れてかすかに白く濁ってきました。これはお酒の旨味成分なのでこれを見ると私はヒートアップしてしまいます。

< 材料 >
OSUZU GIN 30ml
トニックウォーター 60ml
ソーダ 30ml

< 作り方 >
1. 氷を入れた大振りのシャンパン・グラスにジンを注いでカットライム(またはカットレモン)を絞り入れる。
2. トニックウォーターとソーダ―を加える。
3. 炭酸が飛ばないようバースプーンで二、三度氷をリフトする。

ジン・リッキー

OSUZU GIN

< 材料 >
OSUZU GIN 45ml
ライム 1/4 個
ソーダ適量

< 作り方 >
1. グラスにライムを絞りそのまま落とし入れる。
2. 氷を加えジン注ぎ、冷えたソーダで満たす。

コーヒー割

OSUZU GIN

< 材料 >
OSUZU GIN 30ml
よく冷えたコーヒー適量

< 作り方 >
1. よく冷えたカクテル・グラスに材料を入れマドラーでかき混ぜる。

クラフト・ジン界のホロヴィッツ-OSUZU GIN

さてここまで飲み進めたところでこのクラフト・ジン界のホロヴィッツ-OSUZU GIN を活かしきるのにはどうすればよいか︖
・・・・・考えてみました。キーワードは存在感たっぷりの心地良い香り、切れがよく包み込むような柔らかい甘味・旨味が残る。切れが良いということは食中のお酒としても楽しめるはずです。

そこで考えたのが食前酒から食後酒までを全部この OSUZU GIN で通してみようとプログラムを組み立ててみました。

【食前酒】ジン・ソニックを大振りのシャンパン・グラスで
【食中酒】ジン・リッキー
【デザートと一緒に】ジンをコーヒーで割ったもの。
【食後酒】ギムレット
その後ひたすらロックもしくはハーフロック
最後のシメにストレート

【前菜】かつおのたたき、コロッケ
【メイン】豚のステーキ
【デザート】イチジクにクリームチーズとブルーベリージャムを添えたもの

というメニューで上記のプログラムを試してみましたが本当に「極めれば華」でした。

そして最初から最後まで一貫して感じられたのは「やわらかくエレガントな甘味・旨味」です。
酔いが進んで感覚が鈍くなってきてもこれだけははっきりとわかるということです。ベースとなっている芋焼酎に対する造り手の愛情を感じました。

尾鈴山蒸留所はあの「百年の孤独」を製造している黒木本店の別蔵であります。「百年の孤独」を最初に飲んだのも常行寺でした。副住職である私の従弟が「滅多に手に入らないウイスキーみたいな美味い焼酎があるから飲んでみて」と出してくれたのを思い出しました。

今回はOSUZU GINの特徴が私のいろんな記憶を呼び起こしてくれて、大変ご縁を感じる試飲となりました。本当に感謝しております。