豊かな自然、独自の伝統芸能や文化、グルメ、アウトドアスポーツなど、佐渡島の魅力はとても幅広く、隠れた人気スポットもたくさんあるようです。今回は、取材の際に訪れた見どころをいくつかご紹介いたします。
両津港
佐渡島の玄関口である両津港は、佐渡の東側、湾の最奥部に位置する交通の拠点です。新潟-両津間は昭和44年にカーフェリー、昭和52年には、日本で最初の高速旅客船であるジェットフォイルが就航しています。フェリーでは2時間半、ジェットフォイルでは67分で越佐海峡を結んでいます。
かつては北前船の寄港地であった小木港が佐渡の玄関口として栄えましたが、現在は両津港が佐渡航路全体の約9割の乗降客と貨物量を担い、佐渡の人流・物流の中心となっています。
港のターミナルビルには、土産店や天領盃酒造のアンテナショップ、佐渡酒の自動試飲コーナーなどが並び、また、隣接する「道の駅あいぽーと佐渡」は観光案内所としてとても便利です。
さらに、両津港近くの加茂湖は日本百景に選ばれた景勝地で、もともと海だった汽水湖のため牡蠣の養殖が盛んです。シーカヤックやサイクリングなどのアクティビティも充実しており、佐渡の自然を満喫できます。
能舞台
初代佐渡奉行である大久保長安によって能楽が広まり、佐渡独自の文化として創り上げられたのが「薪能」です。薪の灯りが生み出す幻想的な雰囲気の中で演じられる能は、神秘的で特別な魅力に満ちています。現在、佐渡全島に約30ヶ所ある能舞台で定期的に薪能が開催され、佐渡の文化として大切に継承されています。
今回訪れた大膳神社能舞台は、佐渡宝生流の家元である本間家が拠点とした由緒ある舞台です。重厚な茅葺き屋根が特徴のこの舞台は気品に満ちており、新潟県指定文化財として実際の公演にも使用されながら保存されています。薪能が開催される夜には神社に多くの人が集い、佐渡の伝統文化が粛々と受け継がれている様子が感じられます。
真野新町の町並み
「史跡の町」と書かれた看板がある真野新町には、かつての栄華を感じさせる美しい町並みが見られます。江戸時代には相川の奉行所と江戸との間は活発に往来がおこなわれ、この町は奉行所のいわば城下町として発達しました。順徳上皇の御陵もあり、佐渡の中心地であったことを物語っています。街道沿いには柳の並木が続き、重厚な門構えの屋敷や昭和初期の面影を残した商店など、訪れる人にどこか懐かしさを感じさせてくれます。
宿根木の町並み
小木半島の南側に位置する町「宿根木(しゅくねぎ)」は、かつての有力者の屋敷が建ち並び、当時の景観を色濃く残しています。石畳の路地は人がやっとすれ違えるほどの狭さで、建物と建物で囲まれた風景はまるでヨーロッパの路地のようです。また、舟板を使った板壁や石屋根は、厳しい寒さや強風から家を守るための工夫で、懐かしい風情を感じます。見学できるように開放された建物もありますが、今もなお人が暮らす家も多く、宿根木は国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。
小木海岸周辺には、ゴツゴツとした奇岩が立ち並ぶ景色が広がっています。これは約300万年前、海底から隆起して佐渡島が誕生した証拠です。大地の壮大な活動を感じられる景観として国の天然記念物に指定されたジオパークでもあります。
海底は浅く岩が多いため、小回りが利く「たらい舟」が沿岸漁に利用されてきました。港では観光用のたらい舟が用意されており、体験乗船が可能です。特に、かがり火が灯る夜のナイトクルーズは神秘的な魅力があります。また、宿根木の路地にはたらい舟をデザインしたマンホールが隠れているので、ぜひ探してみてください。
清九郎邸
宿根木の町には、町並みの観光だけでなく、内部を見学できる歴史的な建物もあります。その一つが清九郎邸です。江戸時代後期に財をなした廻船主の邸宅で、数年前まで実際に住居として使われていたため、手入れが行き届き、老舗旅館のような趣があります。
玄関を入ってすぐの「オマエ」と呼ばれる部屋は、2階まで吹き抜けの広々とした空間で、囲炉裏があり、客人や家族がくつろぐ場所として利用されていました。
建材には艶やかなケヤキの床やアカマツの梁、朱漆が塗り重ねられたスギの一枚板の扉など、贅沢な素材がふんだんに使われています。また、裏庭の奥には岩をくり抜いた貯蔵庫、2階には大人数が集える立派な座敷があり、当時の豪奢な暮らしぶりが伺えます。
佐渡金山
今年、佐渡金山がついに世界遺産に登録されました。古くから「金の島」として知られていた佐渡島ですが、本格的な採掘が始まったのは江戸時代のことです。江戸幕府の管理下で、日本の伝統的な手工業を用いながら、大規模に高品質の金を生産した佐渡金山は、世界的にも稀少な歴史遺産として注目を集めています。
相川地区にある佐渡金山では、平成初期に採掘は終了しましたが、現在は当時の採掘作業を再現したいくつかのコースになっており、今回は「道遊坑」を見学しました。
坑道を進むと、壁面には鉱脈の名残が見え、思わず金を探してしまいそうです。また、坑道内の温度は一年を通じて10度前後と涼しく、そのためお酒や野菜の貯蔵にも活用されています。坑道を抜けると広場があり、そこから見える「道遊の割戸(どうゆうのわりと)」は江戸時代の露頭掘り跡で、佐渡金山を象徴する名所です。幅約30m深さ約74mにも及んで山が割れた姿は圧巻です。江戸時代の人々が金鉱脈を掘り進めた壮大な努力を物語っており、訪れる人々に深い感動を与えています。
京町通り
佐渡奉行所がある相川地区は、最盛期には現在の佐渡の人口に匹敵する約5万人が住み、賑わいを見せていました。京町通りは、奉行所から金山へと続く当時のメインストリートで、鉱山関係者の住居や商店が並び、全国から集まった人々が日々を送りながら、独自の文化を築いていきました。
石畳で整備された通りや時を告げる鐘楼。坂が多く、高台から美しい海の景色を眺めることができます。また、古民家を活用したカフェなどもありますが、江戸時代の風情が今も残り、佐渡金山に携わった人々の暮らしが静かに息づいています。
北沢浮遊選鉱場跡
奉行所の近くに位置する北沢浮遊選鉱場跡は、鉱山の近代化を支えた重要な史跡です。銅の製造技術である浮遊選鉱法を応用して造られた設備群は、「東洋一の浮遊選鉱場」と呼ばれたほどの規模を誇ります。現在、壮大にそびえるコンクリートの基礎部分は廃墟となっていますが、生い茂る草木に青々と彩られ、まるで「天空の城」のような幻想的な雰囲気を醸し出しています。
隣接するレンガ造りの発電所や、シックナーと呼ばれる超巨大な円形設備など、全ての施設が圧倒的に巨大なスケールで、まるで異世界のようです。観光シーズンには夜間ライトアップが施され、さらに幻想的な光景が楽しめます。
トキ
佐渡島は、日本でトキが生息する特別な場所です。トキは絶滅危惧種として手厚く保護され、その美しい姿や優雅に空を舞う様子は、多くの観光客を魅了しています。「トキの森公園」では、専用の観察エリアからトキを間近で観察でき、展示施設ではトキの生態や保護活動について学ぶことが可能です。繁殖活動の成果により、野生のトキは500羽を超え、朝夕には「トキロード」など周辺の田んぼでその姿を目にすることが増えました。
トキは自然保護の象徴であると同時に、トキをデザインした牛乳パックやパンなども販売され、佐渡のシンボルとして地元の人々に親しまれています。
ご紹介した以外にも、佐渡島にはまだまだ多くの観光スポットがあります。1日では回りきれず、一度訪れると何度も足を運びたくなる魅力に溢れた島です。
ダイナミックな海岸線や四季折々に咲き誇る花々、鬼太鼓、佐渡おけさ、美味しいお米、新鮮な魚介、本格的なソーセージ…。雅楽代を片手に、佐渡の豊かな魅力を楽しむ旅の計画を立ててみてはいかがでしょうか。