酒と食事【とっておきのさんまの塩焼き】~ひやおろしが旨い~

絶品!さんまの塩焼き

例年9月第2日曜日に目黒駅前商店街の主催で開催される「目黒のさんま祭り」。薄塩をしたさんまを備長炭で焼き上げ、大根おろしとすだちを添えて振る舞われます。例年三万人を越える人出があり、さんまを頂くまでなんと3~5時間も並ぶ賑わいを見せます。この祭のきっかけは古典落語の「目黒のさんま」。庶民的でシンプルな調理法のさんまの塩焼きに殿様が魅了される話で、脂の乗ったその濃厚な美味しさには万人に愛される魅力があります。

また、さんまの水揚げ日本一を誇る根室花咲漁港で例年9月下旬に開催される「根室さんま祭り」でも旬のさんまが美味しく食べられます。「大漁さんまのつかみ取り」「さんまの箱売り」「さんま漁船の集魚灯ライトアップイベント」等、まさにさんま尽くしの祭典で、「岸壁炉端コーナー」で獲れたての「とろさんま」を焼いて食べる醍醐味は是非一度は体験したいものです。

残念なことにコロナ禍の影響で、昨年に続き今年もどちらの祭も中止となりました。そこで今回は、ご家庭でも絶品のさんまの塩焼きをお楽しみ頂きたく、料理人岡田さんにとっておきの秘訣をご紹介頂きました。この季節、普通に焼いても美味しいのですが、ひと味違うさんまの塩焼きをお試し頂き、お好みのひやおろしを存分にお楽しみ下さい。

さんまの塩焼き

<材料>

  • さんま2尾
  • 大根(おろし)1/5本
  • 塩(天然あら塩を使用) 少々
  • すだち1個

新鮮なさんまの選び方

プリっとした弾力のある身、濃厚な旨味。脂がたっぷり乗っているにもかかわらず生臭みがなく、心地よい甘味がある。
新鮮な内臓のほろ苦さもさんまの塩焼きの醍醐味ですね。とっておきのさんまの塩焼きを楽しむためには、まず新鮮で脂が乗ったさんまを選ぶ必要があります。その見極めのポイントは次の通りです。
是非さんまを選ぶ際にご参考下さい。

①頭が体に対して小さく見え、頭から背中にかけてこんもりと盛り上がり、厚みがある。
②お腹が硬い。
③黒目の周りが濁ってなく透明で澄んでいる。
④口先が黄色。
⑤尻尾を持って刀のように一直線に立つ。

さんまの塩焼き

秘訣は「2回塩を振る」こと

1.

まず、さんまの側線に沿って一直線に包丁を入れます。
そうすることで身や皮が割れず、見た目も美しく焼き上がります。さんまをバットに入れ、1回目の塩をやや多めに振ります。20分ほど置くと浸透作用で塩分が魚に入り、タンパク質が変化し身に弾力が出ます。
また、分解酵素によってタンパク質がアミノ酸に分解され旨味が増します。さらに、塩の脱水作用で魚の表面の水分が抜け、魚に含まれるトリメチルアミンなどの生臭さの原因となる成分も出ていきます。

さんまの塩焼き

2.

【1】を水で綺麗に洗い流します。

さんまの塩焼き

3.

2回目の塩を軽く振ります。こうすることで引き締まった味になります。
振り塩は20cm以上高い位置から両面に行います。

4.

グリルを強めの中火くらいで、片面8分、裏返して6~7分こんがりと焼けば出来上がり。
すだちは半分にカットし、大根おろしと共に付け合わせ、盛り付けて完成です。

さんまの塩焼き

付け合わせの「大根とすだち」のお話

さんまの塩焼きに何故、大根卸しとすだちなのか︖
それは、もともと脂の多い魚を少しでもサッパリと頂くための知恵と考えられています。実際それには科学的根拠もあり、大根おろしにはアミラーゼなど多くの消化酵素が含まれており、さんまのような脂肪分を多く含む魚の消化吸収を良くする働きがあるからなのです。

また、青魚のさんまには DHAやEPAなどの脂肪酸が多く含まれ、コレステロールを下げたり血液をサラサラにしたり成人病を予防する効果も期待できます。ただし、このDHAやEPAは酸化しやすいため、強い抗酸化作用がある大根や柑橘類を一緒に食べる事で、酸化することなく摂取できるのです。
また、柑橘類の皮に含まれる苦味は、さんまの脂の甘味を引き立て、より美味しくしてくれます。

さんまの塩焼き

大根の部位、おろし方で大根おろしの味が変わる

大根は、カロリーと糖質が低いヘルシーな食材です。尚且つ抗酸化作用の期待できるビタミンCや、でんぷんやタンパク質を分解する消化酵素も含まれており、消化を促進し胸やけや胃もたれを防ぎます。大根は3等分すると「上部、中部、下部」に分けられ、それぞれの特徴は下記のように異なります。

①上部…水分が多く、甘味が強い。
②中部…柔らかく、辛味と甘味のバランスが良い。
③下部…水分が少なく、辛味が強い。

大根おろしに向く部位は「上部」で、大根を横にして繊維に沿っておろすとマイルドになります。
逆に、辛味が好きな方は大根の「下部」を使い、大根を立てて繊維を壊すようにおろすと、より辛味が強くなります。是非お好みの大根卸しにこだわって楽しんでみて下さい。

さんまの塩焼き

付け合わせの柑橘類にもこだわって

柑橘類を料理に加えると、香りに深みが出て、口当たりが爽やかになり、さっぱりと味を引き締めてくれる効果があります。今回はすだち、カボス、ライムについてご紹介します。お好みの柑橘類にこだわるとより一層美味しくさんまを楽しめるでしょう。

① すだち…小粒で皮の香りが強く、香りだけを楽しむために皮をお吸い物に入れたり香りの強い松茸などに付け合わせます。アルカリ性食品でクエン酸が多く含まれており、新陳代謝を促進してくれます。

②カボス…すだちに比べ大粒で、香りが少ない分、爽やかでジューシーな果汁が食欲をそそります。また、ビタミンC等を含むカボスのクエン酸は、胃液の分泌を正常にし、胃弱の方や食欲不振の時に効果的です。

③ライム…ビタミン類(C.E.B群)やカリウムやマグネシウムなどのミネラルを多く含んでいます。またクエン酸とビタミンCは風邪などのウィルスに対する抵抗力を高めてくれます。香り成分には気持ちをリフレッシュする作用や鎮静効果もある優れものです。お酒のカクテルに使われるイメージがありますが、料理に使っても爽快感と深みを与えてくれます。

さんまの塩焼き

秋に頂きたいおつまみレシピ