リリース出品酒、金賞酒、なにが違うか調べてみた。

6月に行われた全国新酒鑑評会。以前ご紹介させて頂いたように、当店でも金賞を受賞した銘柄を幾つかお取り扱いしています。しかし︕「金賞受賞酒」の他にも同じ蔵から出てくる「出品酒」の存在をご存じでしょうか︖
「えっ︖金賞受賞酒で、もう鑑評会に出したお酒は発売されているのに︖」
そう思った日本酒ファンの方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

今回はそんな「金賞受賞酒」と「出品酒」の違いが何なのかを調べてみました︕
そして、そんな気になるお酒の味の違いも一緒にご紹介いたします︕

そもそも「全国新酒鑑評会」とは︖

出品酒と金賞酒違い

「全国新酒鑑評会」とは、製造された清酒を全国的に調査研究することにより、製造技術と酒質の現状及び動向を明らかにし、そして清酒の品質及び製造技術の向上、国民の清酒に対する認識を高めることを目的としている会で、毎年、酒造年度における年度末にあたる6月頃に開催されています。

では、その鑑評会に出されるものが「出品酒」で、鑑評会にて金賞を取ったものが「金賞受賞酒」になるのでしょうか︖

実はこの2つのお酒、大きな違いがあったんです。

「出品酒」と「金賞受賞酒」の違い

出品酒と金賞酒違い

前述の通り、確かに鑑評会に出されるお酒のことを総称して「出品酒」と呼ぶのですが、この出品酒、醪の一部を絞りの際に「袋つるし」にて絞られたお酒を「斗瓶」にて貯蔵。官能検査を得て最高評価の斗瓶のみ、薄い緑色の500mlリターナブル瓶に入れて出品されます。

斗瓶囲いとは、袋吊りにて滴る雫を丁寧に集め、一斗(18リットル)入りの瓶に入れる、という絞り方の事。
この斗瓶囲いにて生まれたお酒は、醪に圧を加える事なく自重によってじっくりと絞られ、自然に滴る雫は余分な成分が一切混ざることなく、非常に華やかな香りや繊細で美しい味わいを持ったお酒になります。

つまり非常に手間暇を掛けられて生まれる「出品酒」、まさにその蔵渾身の一滴といえるお酒です。

では、「金賞受賞酒」とはなんなのか︖
ただただ鑑評会で金賞をもらった出品酒のこと、ではないんです。

先ほどの説明で、出品酒は斗瓶囲いで手間暇をたっぷりと掛けて絞る、とご紹介致しましたが、金賞受賞酒は金賞を取った出品酒と同じ発酵タンクの醪を、通常よく販売されている機械絞りにて圧搾し発売されます。

確かに金賞を受賞したお酒と醪自体は変わらないので、同じもののように思えるのですが、斗瓶囲いで絞られたお酒は、機械絞りのものとは格段に味も、香りも違います。つまり「金賞受賞酒」と「出品酒」、同じタンク、同じ醪ではあるのですが、絞り方の違いによって、生まれてくるお酒の味わい、香りは全く異なるものになっています。

確かに「金賞受賞酒」でも非常に完成度が高く、美味しいお酒ではあるのですが、実は、金賞を取った蔵のお届けする「出品酒」こそが、真たる「金賞受賞酒」であり、全国数多の蔵の頂点を飾るに相応しいお酒と言えるのです︕

ではそんな「金賞受賞酒」と「出品酒」、実際に飲み比べてみましょう︕

実飲︕『徳川家康』 、「大吟醸 金賞受賞酒」と「出品酒 斗瓶取別囲」︕

出品酒と金賞酒違い

今回は鍵やでいくつかある金賞受賞酒の中で、丸石醸造の『徳川家康』の2つを頂きます。

丸石醸造は、元禄三年、1690年に徳川家康公生誕の地であり、山と川に囲まれた歴史と自然が溢れる愛知県岡崎にて生まれて以来酒造りを続ける蔵。そんな歴史ある蔵が造り出す渾身の酒、それが「徳川家康」です。
この『徳川家康』、全国新酒鑑評会で11回も金賞を受賞している程に評価が高く、正に徳川家康の名を冠するに相応しく、丸石醸造だからこそ生み出せた自慢の銘柄です。

ではさっそく、頂いていきましょう。

徳川家康 大吟醸 金賞受賞酒

出品酒と金賞酒違い

白いダイヤモンドとも称される山田錦を40%まで磨き、丁寧に丁寧に、じっくりと発酵させることで、お米自身の持つ旨味、甘さ、円やかさを極限まで引き出した、贅沢な一品。

栓を抜くと、メロンなリンゴのようなフルーティーな香りが漂います。口に含めば旨味、甘味がしっかりと感じられ、飲み込めば上品な余韻を感じ、美しく引いて行きます。金賞の冠に恥じない、本当に美味しい日本酒です。
紫に金色の名前の如く江戸時代の豪著な着物を思わせるラベルも相まって、贈答品にも最適です。

徳川家康 大吟醸 出品酒 斗瓶取別囲

出品酒と金賞酒違い

次に「出品酒」の方を頂きます。
このお酒は、ただでさえ贅沢に絞られた斗瓶取りの中でも出来の良いものを選抜し、更に澄み切った上澄み部分だけを汲み取ると、本当に出来うる技術を全て費やし、正しく出品酒にふさわしい、渾身の一本となっています。

実際に味わってみると、「金賞受賞酒」と飲み比べても間違いなく一段階上のお酒であることが良く分かります。まるでかつて徳川家康公の築いた豪華絢爛なお城を思わせる華やかな香り立ちに、雑味を一切含まない豊かな旨味、舌にしっかりと感じる甘味。そしてスパッとまるで日本刀のような美しすぎるキレとその余韻に、思わず敬服してしまいます。

まるで城に眠るお宝のような、贅沢なこのお酒。まさしく丸石醸造の技術の結晶とも言えるのではないでしょうか。

いかがでしたでしょうか︖
「出品酒」は極限までこだわりぬいた製法の為、極少量しか製造が出来ず、超限定品なのもお分かり頂けたはず︕
「金賞受賞酒」を味わうのなら、金賞を貰った「出品酒」も是非この機会にどうぞ︕