御前酒 1859

御前酒ごぜんしゅ9NINEないん(辻本店)岡山県


辻本店の酒蔵

文化元年(1804年)、岡山県真庭市勝山に酒造業を創業。当時は三浦藩御用達の献上酒として「御前酒」の銘(現在の銘柄の由来) を受け、一般には「萬悦」の銘柄で親しまれていました。「うまさけの国」と言われる「美作(みまさか)」の地(岡山県北の旧国名)で、寒冷な気候、良質の酒米と水という、恵まれた環境の元、綿々と酒造りをおこなっています。当時としては珍しい昭和45年頃に純米酒の製造にも積極的に取り組み、現在では製造数量の6割以上を占めています。

様々なこだわりを持つ酒造りの中核は、7代目蔵元にして杜氏である辻麻衣子氏。名工と言われた先代杜氏・原田巧氏の後を継ぎ岡山県内初の女性杜氏として就任して以来、全身全霊で酒造りに取り組んでいます。創業から長い歴史を持ち、元は献上酒となるなど、由緒正しい銘柄の蔵元である辻家には、文人墨客の訪れることが多く、与謝野鉄幹、晶子夫妻の逗留をはじめ尾上紫舟、碧梧桐等が画帳、色紙に筆跡を残しています。

御前酒の持つ『絶対的なこだわり』

そんな長い歴史を持つ御前酒には、並々ならぬこだわりがあります。使用米は全量岡山県内産の雄町、そして奈良・菩提山正暦寺にて生み出された伝統の醸造技術、菩提酛を用いて醸造されています。

菩提酛とは、酛(酒母のこと)を立てる際の技法のひとつで、発祥は古く、室町時代と言われています。生米と蒸米を水に漬け込み、空気中の乳酸菌を取り込み、その乳酸菌を多分に含んだ『そやし水』を酒母造りの仕込水とする仕込み方法で、この天然の乳酸菌によって腐造を防ぐ、現在における山廃や生酛造りの原型とも言える技術です。
御前酒では古典的な菩提酛の技法を蔵の風土や環境などに合わせて改良。『御前酒菩提酛』と名付けて酒造りに用いています。御前酒菩提酛は爽やかな果実香、複雑な旨味、スッキリした酸味など、御前酒の旨さの秘訣でもある味わいを造る大きな要因の一つとなっています。

辻本店の酒蔵

また、辻本店では令和4酒造年度より全量雄町を使用するようになりました。これは、岡山で酒を醸すことからくる使命感、そして覚悟のようなものだと言います。雄町と言えば岡山でのみ栽培され、全国的に酒米として高い人気を博す酒米です。そんな素晴らしい酒米を生産しながらも、県内での使用量は全体量のわずか16%。蔵数にして、岡山県の酒造組合に加盟している40蔵中10蔵程度という現実があります。そんな実態から、辻本店は『岡山の蔵が雄町を使用しなければ、簡単に雄町の田圃が失われる』という危機感を感じ、岡山に蔵を構え、酒を醸すものの使命として、全量雄町を使用した酒造りに踏み切りました。

菩提酛と雄町、一見骨太で濃厚、一癖あるような酒を醸し出しそうに聞こえますが、辻本店の長い歴史に支えられた技術をもってして、御前酒のコンセプトでもある『旨味があってキレがよい、知らないうちに飲んでしまう飲み飽きしない酒』を見事に醸し、その味わいが持つ魅力から全国に根強いファンを生み出しています。
地産地消、そしてSDGsの考えに基づき、蔵だけでなく、地域を豊かにする。そういった考えの元、御前酒は今日も『うまさけ』を美作勝山の地にて醸します。

辻本店の酒蔵

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