酒を楽しむ風の森807シリーズ3種飲み比べ

伝統とコダワリの低精米シリーズ

伝統とコダワリの低精米シリーズ

今回ご紹介するのは風の森の3品種。風の森を造る奈良県御所市油長酒造は、お米の素材の良さを引き出す製法がその身上です。そのために、米は磨き過ぎず、無加水、火入れしない生酒であることなどにこだわった酒造りに取り組まれています。

807シリーズのラベルには「大地のエネルギーを発酵に活かし、豊かな複雑味を最大化したシリーズ」と記載されています。数字の意味は、精米歩合80%の米をきょうかい7号酵母で醸したという事。きょうかい7号とは「真澄」で有名な長野県宮坂醸造で分離された酵母で、熊本の9号と並ぶ伝統的な優良酵母です。

最近はフルーティな香りが出しやすい「香り酵母」の活用が増えていますが、風の森の酒造りは、伝統的な酵母を用いて超低温でじっくりしっかりと醸す事によって米のナチュラルなニュアンスを引き出しフルーティな香味を生み出しているのです。

酒の印象はラベルで決まる

酒の印象はラベルで決まる

まず、ラベルを見比べてみましょう。左から「山田錦」「雄町」「露葉風」です。大地のエネルギーの象徴とした「金剛葛城山系の原生林」の写真を背景に、つややかな米の光沢を感じさせるメタリックカラーのロゴがあしらわれています。品種毎に色が違い、少しずつ印象が異なります。

【山田錦】
やや緑がかったゴールドイエローは高貴で神々しく、その中央にコバルトブルーのロゴが鮮やかに記され、大地の輝きを感じさせます。

【雄町】
やや黄色がかっただいだい色です。雄町らしい完熟したふくよかなイメージにピッタリです。淡いだいだい色は、濃厚で凝縮したマンダリンオレンジのような印象を持ちます。瑠璃色のロゴは気品があり、大地の恵みを感じさせるラベルです。

【露葉風】
少し灰色がかった消墨色の背景。ネガポシ反転させたような、意表を突かれるデザインになっています。メタリックシルバーで記されたロゴはミステリアスな雰囲気があり、多彩な未知の大地を感じさせるラベルです。

あなたは見分けられますか?

あなたは見分けられますか?

それでは、 利き猪口で色味を比べてみましょう。ところで、利き猪口の「青い蛇の目模様」はなぜ描かれているのかご存じですか︖よく「真ん中めがけて注げばこぼさない」とか「蛇の目が歪んで見えたら酔っています」等冗談で言われますが、正解は色、濁りを厳密に確認するためのものです。黄色の反対色の青色により、白い部分に黄色が写りやすくなり、青い部分には白濁が判りやすく透明度を見分ける事ができます。

上の写真はラベルと同じ並びです。

左の山田錦は淡い黄色、
真ん中の雄町が一番濃く、オレンジがかった黄色、
そして右の露葉風は青みがかった黄色に見えます。奇しくもラベルのイメージと重なりますね。

香り

香り

次に、ティスティング用のワイングラスで香りを確認します。香り高い吟醸酒や生酒は、より香りを感じやすいワイングラスで楽しむことをお薦めします。風の森は「お米ジュース」と言われるように、ナチュラルな味をフレッシュに楽しめます。

グラスに注ぐと微かな気泡が見られます。香りは、生酒特有のメロンのような香りが際立ちます。また、ピュアな純米酒であるからこそ感じられる、つきたての餅や団子のような米本来の香りも感じます。

山田錦はライチやマスクメロン、雄町は夕張メロン、露葉風はまくわ瓜のような香りの印象です。

味わい

味わい

3品種とも微発泡の刺激がわずかにありますが、口当たりはなめらかです。心地よい甘味が、バランスの良い酸と調和しています。余韻もしっかりとあり、アルコール感は優しくナチュラルで飲みやすいお酒です。

山田錦はお米にタンパク質が少ないこともあり、しっかりと発酵し、余韻にキレも感じます。
雄町はふくよかな甘みが優しく、余韻に癒されます。
露葉風はお米に雑味成分が多いため、酸、苦味を感じ、複雑なニュアンスを感じます。
それぞれのお米の印象をワイン用のぶどうに例えると山田錦がシャルドネ、雄町がリースリング、露葉風はピノグリのような感想です。

生酒は通常6~8度でフレッシュに楽しむものですが、燗にすることで甘味度が上がり、苦味や雑味が抑えられ飲みやすくなる効果があります。
実際、露葉風を40度程度の燗にして試してみました。甘味度が高まり、フレッシュな風味が抑えられ、酸のシャープさがぼやけますが、甘味やその他の味わいと調和し、冷酒とは違ったまとまりを感じます。

鍋など温かい料理と楽しまれるときは、ぬる燗で楽しむのも一興でしょう。また、ポン酢に少し入れるとまろやかになります。

合わせてみたい料理

合わせてみたい料理

3品種ともフルーティですが味がしっかりしているので、幅広い料理と合わせられると思います。

山田錦はカプレーゼやクリームチーズ、スモークサーモンなどが合うと思いますが、雄町だとよりボリューム感がある生ハムメロンやフレッシューチーズ、露葉風はより複雑味のあるイベリコハムやカマンベールがいいでしょうか。

エビを合わすとすれば、山田錦がクルマエビ、雄町がボタンエビ、露葉風はテナガエビ。
天ぷらだと、山田錦がキスやかき揚げ、雄町がアナゴやさつまいも、露葉風はアユやかぼちゃがよろしいでしょうか。

ナチュラルな風の森はお米にも合うと思います。山田錦が雑煮の餅やちらし寿司、雄町がおはぎや中華ちまき、露葉風は桜餅やチキンライスなどいかがでしょう。

暖かい料理では、山田錦が土瓶蒸しやたらちり、雄町は牛しゃぶ、露葉風は野菜の風味たっぷりのポトフやラタトゥイユなどお試しください。露葉風は果物と野菜の両方のニュアンスを感じるので、バターナッツかぼちゃや熟れたズッキーニ、柿の天ぷらなど奈良産の食材と合わせてみても興味深いと思います。

フードペアリングは実際ご本人が美味しいと思われる料理が最も合う料理です。上記コメントをご参考頂き、ご自身のお好みに合ったペアリングをお探しいただければ幸いです。