秋の八寸で呑む
八寸は、24 ㎝ (1 寸 = 約 3 ㎝ ) 四方の盆等に季節の魚や野菜料理を少しずつあしらった膳です。もともとは懐石料理の中程で出されていたものですが、会席料理の先付の次に出されるようになり(前八寸)、季節感やバラエティーを楽しめる膳として発展しました。そして、旬の山海の幸を少しずつ数品盛り合わせた八寸は、酒を呑むのにぴったりの膳としてお品書きの中ほどでも供されるようになったのです(中八寸)。また、彩り豊かな盛り付けは酒席を華やかに演出してくれます。
今回は中八寸として鯛の三色焼きをご紹介します。八寸は作り手の技量やセンスが感じられるもの。お気にいりの食材に工夫を凝らし、自分好みの八寸を楽しむのも粋ですね。
鯛の三色焼き
<材料>
- 鯛(800g ~ 1kg)
- 生うに
- 木の芽
<いくら醤油漬け>
- いくら(筋子からほぐした状態のもの)
- 薄口醤油
- みりん
- 煮きり酒(日本酒)
<海苔玉子>
- ゆで卵(黄身
- 味付海苔
<銀杏>
- 銀杏(水煮)
- みりん
- 塩
<紅葉麩>
- 紅葉麩
- だし汁
- 薄口醤油
- 塩
1.
合わせ調味料にいくらを漬け込みます。
煮きり酒は、鍋に日本酒を入れ、ガスコンロに火をつけます。沸騰してきますと、30 秒ほどでアルコール分が飛びます(まれに鍋肌に火が着く事がありますので気をつけて下さい)。それによってまったりとした味に変化し、いくらの塩分をまろやかにし、仕上がりが更に美味しくなります。そこに薄口醬油とみりんを合わせ冷まし、いくらを 30 分くらい漬け込みます。
2.
鯛を3枚におろして、血合いや中骨、腹骨、小骨などを取りのぞいた上身の状態にします。頭はぶつ切りにし、上身と共に振り塩をします。20 分くらいしましたら余計な水分が出てきますのでキッチンペーパーで拭き取ります。
3.
海苔玉子は先ず、ゆで卵の黄身だけ取り出し裏ごしにかけます。それをフライパンで弱火で煎っていくと黄身の油分が抜けてサラサラの煎り卵に仕上がります。米粒くらいの大きさにカットした味付海苔を混ぜ合わせたら完成です。
4.
銀杏はさっと湯通しし、みりんと塩で味付けします。
5.
鍋に紅葉麩、だし汁、薄口醤油、塩を入れ、5分ほど味が馴染むぐらいにさっと含め煮にします。
6.
鯛の上身を一口大の切り身にカットし、頭と共にグリルで焼いていきます。
鯛の身が裏表 8 割くらい焼けましたら鯛の身の上に、生うに、海苔玉子、木の芽を半量のせガスバーナーで炙ります。
7.
一度目の木の芽はそこそこ炙り、鯛に香りを染み込ませます。最後にもう一度残りの木の芽をのせると更に香りがよくなります。
8.
海苔玉子の上にいくらを少々のせます。残ったいくらは小鉢に入れ、添えます。
9.
秋らしく、紅葉麩や銀杏をあしらいで添え、盛り付けて完成です。