酒をつくる御神水で仕込む酒~日光の名水と名瀑~【小林酒造取材記】

日光連山の恵み、御神水

日光の名水と名瀑

鳳凰美田の仕込み水は、日光連山がもたらす水です。
その主峰、男体山は二荒山とも呼ばれ、古くから生まれた山岳信仰の霊場として二荒山神社が創建されました。

さらに、男体山、女峰山にはそれぞれ男体権現、女体権現が、太郎山には両神の御子神とした太郎権現が宿ると考えられ、日光三所権現信仰が形作られたのです。

そしてそれらの山々に降る雨は豊富な伏流水をもたらし、命のもととなる水は神からの恵みとして大切に扱われてきたのです。

日光の名水と名瀑

広大な日光連山全体を神域とする二荒山神社。

その境内に湧き出る泉は「二荒霊泉」と呼ばれ、
知恵がつき若返る御利益のある霊水とされています。

また、二社一寺の入口に当たる神橋の横にも湧水があり
「名水磐裂霊水」として取水場が設けられ、観光名所になっています。

日光の名水と名瀑

これらの水の源泉は、二荒山神社の北1キロほどの山中にある滝尾神社の霊泉です。

滝尾神社は二荒山神社の別宮に当たり、その境内には昔から名水として知られる湧水があり、「酒の泉」と呼ばれています。
この水で仕込むと良い酒ができると崇められ、二荒山神社本宮では春には報醸祭、秋には祈醸祭が執り行われます。

「酒の泉」の横には「白糸の滝」があり、清冽な印象を際立てています。この水はまさに日光を代表する名水です。
そして、その程近くに鳳凰美田の仕込み水の取水場があるのです。

御神水を磨く浄水場

日光の名水と名瀑

日光の社寺には、日本で最も古い水道局の一つ「二社一寺水道事務所」があります。
それは清らかな御神水を生活の源として大切に使ってきた何よりの証です。

また、豊かな水量を活かした小水力発電所「滝尾発電所」も歴史ある施設で、古くより自家用の電気をまかなっています。
随所に流れるせせらぎはいずれも水流が多く、大雨の後のような流量があり、流れる音の大きさに御神威を感じます。

日光の名水と名瀑

発電所から少し上った所に浄水場があります。
ここが鳳凰美田の仕込み水の取水場です。
清酒の仕込み水の水源としては日本で1番高い場所にあるとのこと。

「日光の取水場の上には何もありません。間違いなく天上界に一番近い水です。」

この浄水場は大正14年に造られたもので、小学校のプールのようなコンパクトな浄水槽が5つほどあります。
そこには砂が敷き詰められ、自然ろ過が行われています。

浄化槽のすぐ側には祠があり、その水で造った酒を供え、神の恵みに感謝してきた営みが目に浮かびます。

日光の名水と名瀑

小林酒造では、この水をタンクローリーで運び仕込み水としています。
それは二社一寺との関係性がある故できること。

標高の高い山中の水は不純物を含まない降ったばかりの雨が中心なので、硬度は限りなく小さくピュアです。
そのため柔らかく繊細な水質で、じっくりと発酵させる生酛造りや吟醸造りにしか使うことができないのです。

御神水を活かす伝統的な酒造り

日光の名水と名瀑

日本酒の成分には、アルコールはもちろん、糖質やアミノ酸等が含まれますが、その約80%が水です。
ですから、良質な水があってこそ初めて良質な酒が醸せるのです。

特に、カリウム、リン、マグネシウム、カルシウム等のミネラルは麹菌や酵母の栄養となり、発酵が旺盛になります。
一方で、鉄やマンガン、重金属が含まれると、酒の色が褐色に変化し、さらに香味も悪くなってしまいます。

酒造用水の環境を保全し美しい水を持続的に確保できることはとても重要になってきています。
高品質の御神水を安定的に確保できることはまさに神の恵みといえるでしょう。

日光の名水と名瀑

鳳凰美田の仕込み水は限りなくピュアな超軟水です。
鉄やマンガンや重金属を含まない長所がある一方で、
酵母が栄養源にするカリウムやリン等のミネラルの含有量も少なく、発酵が緩やかになります。

そのため、健全な発酵をさせるためには工夫が必要で、その一つとして酵素力の強い麹や溶けやすい掛け米が重要になります。

それが実現できるのが、和釜による伝統的蒸きょうなのです。
手間隙をかけて和釜を用いる手造りだからこそ、鳳凰美田のみずみずしくフルーティな味わいを醸し出すことができるのです。

奥日光の大自然と名瀑を巡る

日光の豊かな水を象徴するものに滝があります。
日光連山の火山活動によって川が塞き止められ、多くの滝が造られました。

大自然の中にある滝は心も体も癒してくれるパワースポットです。
日本三名瀑の1つに数えられる「華厳滝」が有名ですが、今回は奥日光を巡り、道中の見どころと名瀑「湯滝」をご紹介します。

日光の名水と名瀑

日光市街地からいろは坂を上り奥日光に向かいます。
この道は名前の通りいろは文字と同数の48ヶ所のカーブがある坂道で、日本の道100選に選ばれています。

その高低差は440mにもおよび、大自然をアクティブに駆け抜けるドライブは壮快で、四季折々の大パノラマを様々な角度から楽しむことができます。
秋の紅葉シーズンは特に多くの観光客が訪れるため、交通渋滞には注意が必要です。

日光の名水と名瀑

いろは坂を上がるとそこは中禅寺湖。
古くから避暑地として整備され、老舗ホテルや海外の高級ホテルが旅人を迎え入れ、ゆったりともてなしてくれます。

曲がりくねったいろは坂から一転、爽やかな湖畔をドライブしていくと二荒山神社の中宮祠があります。
ここは奈良時代に修行の道場として造られたもので、境内の登拝口より男体山に登ることができ、山頂には二荒山神社の奥宮が祀られています。

日光の名水と名瀑

湖畔の道を離れ北に進んだところに「竜頭の滝」があります。

残念ながら立ち寄りませんでしたが、
男体山の噴火によって流出した熔岩の上を緩やかに流れ落ちる滝で、
四季折々に表情を変える天然の造形美が楽しめるとのこと。

車窓からは随所に川が見られ、突如現れる滝の流れに息を呑み、
日光の水の豊かさを身にしみて感じます。

日光の名水と名瀑

さらに北に進み視界が開けると、そこは戦場が原。
初夏にはワタスゲやレンゲツツジなどの多彩な花が咲く大草原が続き、ミズナラやシラカバの林が取り巻き、男体山の裾野に雄壮に広がる大パノラマを展開します。
多くの野鳥が生息する自然の楽園。贅沢な大自然の癒しに心満たされます。

日光の名水と名瀑

戦場が原を抜けるとほどなく「湯滝」に到着します。
その上流にある湯ノ湖は、温泉がせき止められた湖。そこから流れ落ちる滝なのでこの名がついています。

滝の上から間近に見る光景はダイナミック。70mの落差を、圧倒的な量の水が吸い込まれるように流れ落ちるシーンに思わずたじろぎます。
滝の下に移動すると、そこにはミズナラ、ハルニレ、シラカバなど樹木が混生し、マイナスイオンあふれる公園として整備されています。

観瀑台があり、豊富な水が轟音と共に際限なく流れ落ちる光景に心奪われます。滝が末広がりに落ちてくるためか、不思議な神秘に満ちた自然の力を感じます。まさに自然は神がもたらした恵みであり驚異でもあるのだと改めて実感させられます。

日光の名水と名瀑

「鳳凰美田日光シリーズ」は、お酒を通じて唯一無二の日光ブランディングを行うためのものです。
皆様もぜひ日光の地を訪れ、霊泉や名瀑を巡り自然の御神威に触れてみてはいかがでしょうか。
日光の自然、歴史、文化、それをつなぐ人々、四季折々の食彩の魅力を感じていただくと、きっと鳳凰美田の味わいもさらに深まることでしょう。

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