鳳凰美田について
美田村はかつて栃木県南部にあった村の名前で、現在の小山市に属しています。鳳凰美田の生産蔵、小林酒造はこの地で創業しました。名前の通り美しい田園風景が広がるこの地には穏やかな日本の原風景があります。明治5年創業の小林酒造は、吟醸造りにこだわり、更に原料の米の栽培にもこだわり、手間隙を惜しまず丁寧に造るのが信条です。醸造行程の低温管理に気を配る姿勢は、誇らしげにそびえ立つ20基を越えるサーマルタンク群が物語っています。
上槽はほとんど「しずく搾り」の為、雑味のないピュアな酒質で、かつ飲みごたえのあるものになります。飲めば誰しもがその魅力の虜となり、それゆえ鳳凰美田は絶大な人気を誇っているのです。
鳳凰は、壱万円札の裏側に描かれているデザインでもお馴染みですが、平等院鳳凰堂の大棟に静かに威風を放つ伝説の霊鳥です。平安時代に極楽浄土を模して造られた平等院。その象徴として鳳凰が飾られたのです。鳳凰は清らかで甘い霊泉しか飲まないとされており、鳳凰美田という名前には、鳳凰が飛び交う極楽浄土のような美田の地で醸された霊泉のような酒、という思いが感じられます。
良血のサラブレッド「愛山」
今回ご紹介する2品種に使用される酒造好適米愛山は、近年多くの酒蔵が注目している幻の酒米です。備前雄町系の愛船117と山雄67の交配種。父である山雄67は山田錦と雄町の交配種で、まさに良血のサラブレッドと言えるでしょう。
大粒で育成が難しく姿を消した時期がありましたが、兵庫県で根強く栽培が続けられていたおかげで、再び脚光を浴びることになり、現在では希少な高級酒米の1つとなりました。良血ゆえ雄町を凌ぐ大粒の晩生。心白も大きく砕けやすい。溶けやすいので雑味が出やすいですが、上手く醸すと濃厚で独特の風味のある酒に仕上がる。扱いづらい繊細な酒米だからこそ、造り手の力量が存分に発揮されるのです。
鳳凰美田Black Phoenix純米吟醸無濾過生酒
鳳凰美田のフラグシップ商品と言える、愛山の純米吟醸無濾過生酒です。まるで蒔絵のようなどっしりとしたラベルで、重厚な酒質を期待します。グラスに注ぐと割れにくく固い気泡がエキスの濃さを感じさせます。無濾過生酒にもかかわらず濁りが無く、透明感のある淡いイエロー色は美しく、ワイングラスで頂きたい。
香りは穏やかで、ナチュラルな果実の香りと生酒らしい濃厚な柏餅のような香りを感じます。口に含むと、穏やかな印象はかき消され、露地物の桃やまくわうりのような濃潤な甘味と酸味が感じられ、しっかりとした旨味と調和し、長い余韻を与えます。
海老などの天ぷらを塩レモンで、甘鯛のかぶら蒸しやゆずの釜蒸し等美味しくいただけるでしょう。キャビア等シャンパンに合うような料理、カマンベールチーズやフレッシュなシェーブルチーズとも楽しみたいです。
鳳凰美田純米大吟醸Gold Phoenix
愛山を使用した純米大吟醸の瓶燗火入れです。イタリアのフランチャコルタ用の重厚なボトルに瓶詰めされ、いかにも最高峰の風格を呈しています。そのため容量も750mlと国際仕様です。生酒を瓶詰めしてから温水で加熱する瓶燗火入を採用することで、輸出に耐えられる生酒のような繊細な味わいを実現しています。熟成により幾分か濃いめの色調です。
香りは穏やかですが、Black Phoenixに比べ複雑な香り。果実、米の香りに加え、シナモンやビターチョコ、ナッツや栗のような香り、ハチミツ等、愛山のポテンシャルの高さを改めて感じさせられます。口当たりはスムーズですが、豊かな酸味と苦味がボリュームのある甘味と調和し、至福の味わいとなります。アルザス・グランクリュのゲヴュルツトラミネールのような印象もあります。少し熟成させたことで、角がとれてダイナミックに調和しているのでしょう。
鮪の大トロ、松茸を土瓶蒸しや天ぷらで、ふぐの薄造りなど、洋食でもトリュフ入りのスクランブルエッグや川魚のクリーム煮のほか、鴨肉のオレンジ煮や野禽のパテ、ロッシーニ風やマデラソースのステーキ等高品質の赤ワインに合うような料理にも是非合わせてみては如何でしょうか。とても強い酒質なので、ウオッシュタイプのチーズや熟成させたシェーブルチーズなどとも試してみたいものです。