酒を知る火入れってなに?

今回は[火入れ酒]についてのお話です。
日本酒を購入するときに、「こちらは火入れ酒で…こちらは生酒で…」なんて会話をしたことはありませんか︖︖日本酒をざっくり分類する時にも言われることがありますが、具体的になにが違うのでしょう。

火入れ酒って?

まず、日本酒造りのおさらいをしてみましょう。日本酒の原料は、米、米麹、酵母、仕込み水。これらを一緒に発酵させると白濁したドロドロの状態になります。これを醪(もろみ)と言います。醪を布で絞ると、液体と絞りかすに別れます。その液体が日本酒、布に残ったものが酒粕となります。

この搾ったままの日本酒のことを「生酒」や「本生酒」と呼びます。前回お話した生酒の紹介はこの部分のお酒のことですね。

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通常、酒質を安定させるため、搾ったあとに加熱処理(火入れ作業)をおこなうことが基本となります。この加熱処理(火入れ作業)を2回行ってから出荷されるお酒が一般的に「火入れ酒」と呼ばれます。

火入れの仕方で名前が変わる

火入れ酒って?

日本酒は奥深いもので、火入れの回数とタイミングが違うだけでも味わいが変わり、名称も変わります。

● 火入れ酒…絞った日本酒を火入れしてから貯蔵し、瓶詰め後に火入れしたもの。
● 生貯蔵酒…絞った日本酒を火入れせず生のまま貯蔵して、瓶詰め後にだけ火入れをしたもの。
● 生詰め酒…絞った日本酒を火入れしてから貯蔵し、火入れせずに瓶詰めしたもの。

これらは1度でも火入れをしていますので、名前に[生]とついていても生酒ではありません。

● 本生酒…1度も火入れしない生酒のこと。

この表記はお酒の名前やラベルにも記載されていることが多いので、是非参考にしてみてくださいね!

火入れの方法

火入れ酒って?

火入れの方法と一言でいっても「湯煎」「プレートヒーター」「蛇管」「パストライザー」などの種類があり、酒蔵はそれぞれこだわりの手法で行っております。

風味が残りやすい湯煎では、日本酒を60~65度で30分程度加熱して、低温殺菌します。(温めすぎるとアルコール成分が飛んでしまいますからね。)火入れが終わった後、長時間温めたままにしておくと日本酒の香りが損なわれるため、火入れ後の速やかな冷却処理もセットで行われています。

何故火入れが必要なの︖~火入れのメリット

火入れ酒って?

まずワイン造りを例に、アルコール発酵の説明をします。酵母菌のエサは[糖分]です。酵母菌が葡萄果汁に含まれる糖分を食べる事によってアルコール発酵が進み、甘かった葡萄ジュースはワインに変わります。

日本酒の原料は米、米麹、酵母、仕込み水。葡萄が原料のワインとは違い、お米と酵母だけではアルコール発酵はしません。日本酒をつくる時には、まず蒸した白米に麹菌を振りかけて[米麹]を作る必要があります。麹の酵素の力働きで、お米のデンプンを糖化するのです。これでようやく酵母菌が糖分を食べて、アルコール発酵が進んでいく訳です。

加熱処理をしていない日本酒には、この[糖化酵素]がまだ生きています。糖化酵素が活発に活動する事により、お酒は更に甘くなります。火入れをすることにより酵素は活動出来なくなり、造り手の狙ったもっとも美味しい味に落ち着いて安定してくれるのです。

火入れ酒って?

そしてもう一つ![火落ち菌]という細菌の繁殖も防ぐ事が出来ます。もし日本酒の中へ火落ち菌が入り込んで生活していくと、日本酒は濁りや臭み、酸化を促してしまいますが、火入れによって火落ち菌が引き起こすこのような現象を防ぐ事が出来ます。

火入れすることによって、保存可能な日数もぐんと長くなり、保管の仕方も直射日光を避けた20度以下であれば安心ですので、必ずしも冷蔵庫に入れる必要はありません。わたしたち買い手にとってもメリットがたくさんあるんです。

前回、生酒についてお話しましたが、それぞれの違い、良さを知って、日本酒の奥深い世界を楽しんでいただければ幸いです。